四日市市内山事案
1.事案の概要
平成11年度までに、四日市市内山町地内の産業廃棄物最終処分場で、許可面積・容量を超える処分及び許可品目以外の廃棄物の処分が行われ、また、隣接する中間処理施設(破砕)で、無許可処分場設置(自社安定型処分場が3,000m2を超過)及び埋立可能品目以外の廃棄物の処分が行われたものです。それぞれの施設の設置者に度重なる改善命令等を行ってきましたが、改善が実施されなかったため、許可を取り消しました。
(1) 廃棄物の種類、投棄面積及び容量
廃プラスチック、コンクリート片、木くず、紙くず等が確認され、全体面積は約20,000m2、容量は約340,000m3と推定されました。
(2) 汚染等の状況
平成17年度に実施した安全性確認調査において、ボーリング孔内で最高5,000ppmの硫化水素や高濃度のメタンが検出されました。
2.生活環境保全上の支障
ガスの発生を放置した場合、廃棄物層中から硫化水素やメタンが流出し、周辺で硫化水素による悪臭などの被害が生じたり、メタンが空気と混合された状態で、何らかの火源があった場合、火災を引き起こすなど、生活環境保全上の支障が生じるおそれがあります。
3.措置命令の概要
平成18年3月14日に、原因となった最終処分場の設置者である株式会社シーマコーポレーション(不適正処理当時の名称は成豊株式会社)及び当時の代表取締役に対し、発生ガスの排除及び処理、雨水浸透防止、並びに、廃棄物の飛散及び流出の防止等の措置を講じるよう命じました。
4.緊急行政代執行の概要
原因者による措置が講じられなかったことなどから、早急な対応を要する発生ガスの排除及び処理について、平成19年2月から行政代執行に着手しました。
【内容】
(1)硫化水素ガス等の回収処理
①ガス抜き管の設置
②ガス回収管の敷設
③硫化水素処理装置の設置
(2)立入禁止措置
立入防止フェンスの設置
5.行政代執行による恒久対策の検討
行政代執行の着手により、廃棄物層内で検出される硫化水素ガスは最大で1,000ppm程度まで低下しましたが、平成21~22年度に実施した補完的調査の結果、廃棄物層内部に硫化水素ガスの発生原因物質が高濃度に含まれている部分が確認され、硫化水素ガスが継続して発生することが想定されました。
このことから、地域住民の安全・安心を確保するため、経済的・技術的に合理的で地域住民等関係者の合意が得られる恒久対策工法のとりまとめに向けて、学識経験者で構成される「四日市市内山事案技術検討専門委員会」を設置しました。
6.技術検討専門委員会の開催状況
第1回技術検討専門委員会(平成23年9月9日)
第2回技術検討専門委員会(平成23年11月17日)
第3回技術検討専門委員会(平成24年1月31日)
第4回技術検討専門委員会(平成24年6月28日)
第5回技術検討専門委員会(平成25年3月22日)
第6回技術検討専門委員会(平成25年12月20日)
第7回技術検討専門委員会(平成27年9月10日)
第8回技術検討専門委員会(平成29年9月29日)
第9回技術検討専門委員会(平成30年11月30日)
第10回技術検討専門委員会(令和元年9月11日)
7.産廃特措法に基づく実施計画(第1段階)の環境大臣の同意
産廃特措法は、平成10年6月16日以前に行われた不法投棄等による支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、都道府県等が行う特定支障除去等事業に対し国が支援措置を講ずるものであり、同法では、事業費の90%が起債対象となり、起債額の50%が特別交付税にて措置されます。
当事案においては、高濃度の硫化水素ガス等が発生している状況では、整形覆土対策等を行った場合、周辺への影響が懸念されることから、まず、第1段階で硫化水素ガスの発生を抑制する対策を実施することとし、学識者で構成する技術検討専門委員会の検討結果を踏まえ、恒久対策の第1段階として硫化水素ガス発生抑制対策に係る実施計画を策定し、環境省による技術的な審査及び行政対応検証を経て、平成24年6月7日、産廃特措法に基づく環境大臣の同意を得て、平成24年11月から平成26年10月まで実施しました。
【実施計画の概要】
①事業内容
霧状酸化剤注入法による硫化水素ガス発生抑制対策
②事業費 約1億円
③期 間 平成24年度
8.産廃特措法に基づく実施計画(第2段階)の環境大臣の同意(第1回変更)
恒久対策の第2段階として整形覆土対策に係る実施計画(変更)を策定し、平成25年3月26日、産廃特措法に基づく環境大臣の同意を得ました。
整形覆土対策は第1段階対策の効果を確認後、平成26年10月から工事に着手しました。
【実施計画の概要】
①事業内容
恒久対策の第2段階として整形覆土対策を実施し、雨水の浸透を防止するとともに、法面の安定性確保や法面補強を行います。
また、硫化水素ガス等の発生防止機能を持たせた覆土等を実施します。
整形作業により発生した廃棄物は、適正に処理します。
②事業費 約12億円(全体事業費は約13億円)
③期 間 平成25~31年度(全体事業は平成24~31年度)
9.産廃特措法に基づく実施計画(第2段階)の環境大臣の同意(第2回変更)
平成26年10月から準備工事を行った後、平成27年3月から天端部等における掘削や整形覆土工事を実施したところ、掘削した廃棄物の性状が当初の想定と異なり、廃棄物の選別・処理費が増額したことに起因して、総事業費の増額に伴う実施計画の変更が必要となりました。
このため、実施計画(変更)を策定して、平成28年2月に環境省へ正式に同計画を提出し、平成28年3月31日、産廃特措法に基づく環境大臣の同意を得ました。
その後、法面部の整形覆土工事および側溝や雨水調整池等の排水設備の設置工事を実施し、平成29年10月までに全ての工事が完了しました。
【実施計画の概要】
①事業内容
恒久対策の第2段階として整形覆土対策を実施し、雨水の浸透を防止するとともに、法面の安定性確保や法面補強を行います。
また、硫化水素ガス等の発生防止機能を持たせた覆土等を実施します。
整形作業により発生した廃棄物は、適正に処理します。
②事業費 約22億円(変更前:約13億円)
③期 間 平成25~31年度(全体事業は平成24~31年度)(事業期間については変更なし)
四日市市内山事案実施計画(第2回変更) (PDF:7,050KB)
10.対策効果の確認
平成29年10月に恒久対策(整形覆土工事)が完了し、対策効果の確認(おおむね2年間)を実施してきました。令和元年9月11日に開催した第10回四日市市内山事案技術検討専門委員会において、支障除去事業の終了要件である対策目標を達成しているとの判断が示されました。
【実施計画における目標達成にかかる判断基準】
・硫化水素ガス濃度が敷地境界において基準(0.02ppm)以下であること。
・メタンガスが滞留しない状態が保たれていること。(ガス拡散施設に異常が認められないこと)
・法面崩落等による廃棄物の飛散・流出がないこと。
(1)ガス等のモニタリング結果
硫化水素の濃度は事案地内の観測井戸(H24-47)の管内において低い状態(0.002ppm未満~5ppm)で推
移しており、継続的な上昇傾向は認められません。同地点におけるメタンの濃度は60%以下で変動しながら推
移していますが、ガス拡散施設に変状はなくメタンガスが滞留することはない状況です。
また、発生ガス量は少ない状態で推移しており、事案地の地中温度も異常な高温となっていないことから、
事案地は概ね安定した状態であると考えられます。
① 第1段階の硫化水素ガス発生抑制対策まで(平成17年10月~平成25年2月)
ガス抜き管における発生ガス濃度、敷地境界における硫化水素濃度等(調査データ) (PDF: 604KB)
ガス抜き管における硫化水素濃度の推移(グラフ) (PDF: 688KB)
第1段階の硫化水素ガス発生抑制対策の結果概要(硫化水素濃度の推移) (PDF: 3248KB)
② 第1段階の硫化水素ガス発生抑制対策以降(平成25年3月~令和2年3月)
発生ガス濃度、発生ガス量および地中温度(調査データ)(PDF: 880KB)
主な調査項目に関する推移(グラフ)(PDF: 312KB)
(2)水質等のモニタリング結果(平成18年6月~令和2年3月)
事案地および周辺における水質等はこれまでの調査結果の範囲内で推移しており、濃度の継続的な上昇はな
く悪化傾向は認められないことから、事案地および周辺は概ね安定した状態であると考えられます。
なお、令和元年9月に地下水の観測井戸1地点においてほう素濃度の環境基準値超過(2.6mg/L:環境基準
値の2.6倍)が認められました。同月に発生した豪雨に伴う地下水位の変動による影響と考えられ、濃度の低減
傾向が認められることから、引き続きモニタリングにより傾向を把握していきます。
水質(調査データ) (PDF: 1,999KB)
主な調査項目に関する推移(グラフ)(PDF: 512KB)
11.行政代執行の終了及び終了後の対応
(1) 行政代執行の終了
技術検討専門委員会の意見及び支障除去の状況等をふまえ、令和2年3月31日に行政代執行を終了しました。
(2) 行政代執行の終了後の対応
県ではモニタリングやパトロール等により事案地の状況確認を実施していきます。
(ア)モニタリングの実施
地下水等の水質や硫化水素ガスのモニタリング調査を継続します。
(イ)パトロール、立入検査等の実施
定期的にパトロールや廃棄物処理法第19条第1項の規定に基づく立入検査を行い、土地の形質変更が行われていないことや、法面に変状がないこと等の状況確認を行います。