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保環研年報 第15号(2013)

 

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三重県保健環境研究所年報 第15号(通巻第58号)(2013)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

 

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方はこちらからダウンロードできます。

 

 

 

 

 

 

 


 

研究報告

原 著

2013rep1 Loop-mediated Isothermal Amplification (LAMP法)によるボカウイルス迅速検出法の検討

   矢野拓弥,前田千恵,小林章人,赤地重宏,松野由香里,山寺基子,楠原 一,永井佑樹,小林隆司,西中隆道

   キーワード:急性呼吸器感染症,ボカウイルス,LAMP法

 ボカウイルス(Human bocavirus:HBoV)のNP1遺伝子を標的としたLAMPプライマーを設計し,Loop-mediated Isothermal Amplification(LAMP)法による迅速検出法を検討した.その結果,HBoV-LAMP法は,Conventional-PCR法(従来法)と同等以上の感度を有し,他の呼吸器系ウイルスとの交差反応は認められないことを確認した.従来法と比較すると検査に要する時間が1/4~1/5程度に短縮でき,簡便かつ高感度にHBoV遺伝子の検出が可能であった.またLAMPプライマーの設計は比較的簡便であり,簡易迅速診断キットが開発されていない感染症への応用が可能である.今後,インフルエンザウイルスA(H7N9)およびMERSコロナウイルス等のような新種の感染症発生時の迅速検出ツールとして,LAMP法による迅速診断可能な検査態勢を整備することは公衆衛生の向上に寄与するものと考えられた. 

2013rep2 鶏肉から分離された基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌

   永井佑樹,岩出義人,赤地重宏,小林隆司

   キーワード:Extended-Spectrum-β-Lactamase(ESBL),大腸菌,鶏肉,薬剤耐性菌

 近年、薬剤耐性菌の一つである基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(Extended Spectrum-β-Lactamase: ESBL)産生菌の増加が問題となっている.そこで今回,県内で流通する鶏肉におけるESBL産生大腸菌の検出ならびに遺伝子型別を実施した.ESBL産生大腸菌は,国産鶏肉12検体中4検体,輸入鶏肉5検体中3検体の計7検体から検出され,国産鶏肉からは,CTX-M-1,CTX-M-15,輸入鶏肉からはCTX-M-2型のESBL産生大腸菌がそれぞれ分離された.感受性試験では,輸入鶏肉由来株で耐性薬剤数が平均7.3薬剤となり,国産鶏肉由来(平均3.3薬剤)に比べ多剤耐性化傾向が強いことが明らかとなった.ESBL産生菌は,臨床上のみならず感染症対策および食品衛生行政上においても重要な課題であり,今後もその動向を監視していくことが重要であると思われる.

2013rep3 味噌の特定原材料検査(小麦)における大麦の影響

   一色 博,竹川雄太,林 克弘,志村恭子

   キーワード:特定原材料,ELISA,小麦,大麦,偽陽性反応,PCR

 本県では過去の特定原材料(小麦)の収去検査において,味噌でELISA法によるスクリーニング検査陽性,確認試験(PCR法)陰性となる事例が発生している.消費者庁通知では,ELISAでスクリーニングを実施し,確認試験はPCRにより実施することになっている.検査で用いる市販の小麦ELISAキットは大麦等の麦類に交差性があり,大麦を使用した一部の味噌の検査ではスクリーニング検査陽性となる可能性が非常に高く,確認検査の実施を余儀なくされる.一方,確認試験では小麦遺伝子のみを対象としたPCRを行うため,ELISAの陽性が大麦等いずれの麦類の交差反応が原因であるかの特定には至らない.そこで,本研究では,市販の味噌および小麦不使用で大麦を使用して試作した味噌を用いて,DNAの抽出法の確認および大麦検出用プライマーによりPCRを行い,大麦遺伝子の抽出について検証した.その結果,味噌からの麦類DNA抽出には通知法のイオン交換樹脂タイプキットよりQIAGEN製DNeasy®mericon™Foodが有効であり,それを用いて確認を行なったところ,味噌の仕込みに使用される大麦由来原材料により交差反応が起こることが示唆された.
 

ノート

2013rep4 三重県独自の調査様式による性感染症サーベイランスの有効性

         ~年2か月間の拡大サーベイランス結果について~

   福田美和,高橋裕明,奈良谷性子,山内昭則

   キーワード:性感染症,サーベイランス,無症状病原体保有者,パートナー検診,咽頭感染

  三重県では,平成19~21年にかけて実施した性感染症4疾患患者全数把握調査結果を踏まえ,近年の性行動の多様性に対応し,有効な予防対策に資することを目的に,県独自の調査様式による新たなSTD定点サーベイランスを平成24年1月から開始している.本定点サーベイランスのさらなる改善のため,報告対象機関を拡大したサーベイランスを平成24年9~10月の2ヶ月間のみ実施したところ,53機関(皮膚・泌尿器科系30機関,産婦人科系23機関)から協力が得られ,2か月間の患者報告数は263人(男114人,女149人),うち無症状病原体保有者は49人(男11人,女38人)であった.この拡大調査により,各疾患の年齢構成や受診契機などの傾向には大きな違いがなく,定点サーベイランスに一定の妥当性が確認されたほか,定点サーベイランスでこれまで報告されなかった淋菌の咽頭感染例の報告もみられ,無症状病原体保有者,咽頭感染,混合感染の把握に有効であることが確認できた.両者の結果から,さらなる実態把握と感染拡大防止に繋げるには,パートナー健診に積極的に取り組む機関の一層の拡大,潜在する咽頭感染例や無症状病原体保有者を顕在化する検査の推進などが必要と考えられた.

2013rep5   健康危機事案対応のための食品中重金属類迅速分析法の検討について

   吉村英基,前田千恵,原 有紀,志村恭子

   キーワード:重金属,一斉分析,ICP発光分析,前処理

 健康危機事案対応のための食品中の重金属類迅速分析法の検討を行った.13種の食品に9種類の重金属類を添加した試料を用いて,ICP発光分析法等による一斉分析を行うための前処理法について検討した.その結果,硝酸を用いる振とう抽出法と加熱抽出法を用いることで,検討した食品,重金属類については50%以上の回収率を確保でき,本迅速分析法は健康危機発生時のスクリーニングに利用可能であることを確認できた.

2013rep6 甲状腺末中の遊離ヨウ素および甲状腺ホルモンの含有量調査

   竹内 浩,佐藤 誠,原 有紀,志村恭子

   キーワード:甲状腺末,3,3',5-トリヨードチロニン,チロキシン,遊離ヨウ素,高速液体クロマトグラフィー

 乾燥甲状腺は3,3’,5-トリヨードチロニン(T3)とチロキシン(T4)を含有し,生体の基礎代謝を高める作用があるため,その粉末は甲状腺機能低下症等の治療薬として用いられる.しかし,乾燥甲状腺末は“やせ薬”として乱用されるようになり,甲状腺機能亢進症と似た症状の報告がなされるようになった.乾燥甲状腺は動物の甲状腺全体から調製されることからロット間で遊離ヨウ素,T3およびT4の含有量のバラツキが想定される.そこで本研究では,日本薬局方に記載されていない乾燥甲状腺末中のT3およびT4についての分析法を開発し,乾燥甲状腺中の遊離ヨウ素については日本薬局方の定量法で,T3およびT4は開発した分析法を用いて含有量調査を実施した.供試した乾燥甲状腺の遊離ヨウ素は,0.309%で第十五改正日本薬局方の規格基準を満たしていた.T3は289μg/g,T4は1,280μg/gでありT4はT3の約4.5倍高い含量であった.いわゆる健康食品に乾燥甲状腺末を添加した添加回収実験では,ミニカラム精製の有無にかかわらずT3とT4は約77%の回収率であった.

2013rep7 イカリインの抽出方法の検討とインヨウカク中の含有量調査

   竹内 浩,林 克弘,志村恭子

   キーワード:イカリソウ,インヨウカク,イカリイン,高速液体クロマトグラフィー

 イカリソウは古くから強精,強壮薬として用いられる漢方薬であり,イカリソウ中のイカリインを特有成分として,多くの医薬品に配合されている.しかし,「いわゆる健康食品」と称される無承認無許可医薬品に,意図的に混入する違法行為が全国的に報告されており,今後当県でも健康危機事例による分析対応の可能性を否定できない.本研究でイカリインの分析法を検討した結果,超音波抽出法で,イカリソウからイカリインが適切に抽出されることが確認された.また,日本薬局方「インヨウカク」を用いたイカリイン含有量調査を行ったところ,ロットによりその含有量には約2倍近いばらつきがあることが確認された.

2013rep8 LC-MS/MSによる残留動物用医薬品一斉試験法の検討と妥当性評価

   村田 将,豊田真由美,竹内 浩,原 有紀,林 克弘,志村恭子

   キーワード:液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置(LC-MS/MS),残留動物用医薬品,一斉試験法

 畜水産物中の残留動物用医薬品の試験法について,液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)の導入を検討し,牛・豚・鶏それぞれの筋肉,鶏卵および養殖魚を対象として,合成抗菌剤11種と内寄生虫用剤フルベンダゾールを測定する試験法を確立した.厚生労働省が示す妥当性評価ガイドラインに基づいてこの試験法の性能評価を行った結果,対象としたすべての食品およびすべての動物用医薬品において真度,併行精度および室内精度の目標値を満たし,良好な結果が得られた.

2013rep9 三重県におけるベンゾ(a)ピレンの状況について

   佐来栄治,髙士昇吾,西木美紗子,寺本佳宏,西山 亨,吉岡 理

   キーワード:ベンゾ(a)ピレン,浮遊粉じん,有害大気汚染物質,黄砂

 1999年4月~2013年3月に測定した有害大気汚染物質であるベンゾ(a)ピレンの調査結果について,解析を行った.ベンゾ(a)ピレン濃度の変動は,年および地点による差はあるものの春~秋期にかけて低く,秋~春期にかけて高い傾向を示しながら調査開始以来減少傾向を示した.このことは,調査地点の三重県北中部地域の一部が2001年に自動車NOx・PM法の対策地域の指定を受け,対策をおこなってきた効果などが現れたと考えられる.また,黄砂飛来によって4月のベンゾ(a)ピレン濃度が,若干高い傾向にあった.大気環境中の物質の挙動は,気温,風向,風速,天候等の影響を受け年間や季節でも変動が大きく傾向等を評価しにくいが,今回14年間の測定結果を解析することにより三重県北中部地域の大気環境中ベンゾ(a)ピレン濃度が減少傾向にあると考えられた.

2013rep10 過酸化水素水を用いたドライフォグ噴霧法の効果

   西木美紗子,西山 亨,髙士昇吾,寺本佳宏,宮村典仁,佐来栄治,吉岡 理

   キーワード:硫化水素,過酸化水素水,ドライフォグ噴霧法,霧状酸化剤,廃棄物不適正処理

 硫化水素ガスの発生が確認された産業廃棄物安定型最終処分場等において,過酸化水素水を用いたドライフォグ噴霧法の効果を検討した.その結果,3%過酸化水素水を噴霧することで硫化水素ガス濃度および発生量が大幅に減少した.また,噴霧を長期間停止しても硫化水素ガス濃度および発生量の増加は見られず,減少した状態を保つことが判明した.この結果を受け,過酸化水素水を用いたドライフォグ噴霧法が当該現場における行政代執行の恒久対策第1段階として適用されることになった.

資料

2013rep11 三重県における2012年度環境放射能調査結果 

    吉村英基,村田 将,森 康則,澤田陽子,前田 明,志村恭子

   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率

 文部科学省からの委託を受け2012年度の三重県における,降水中の全ベータ放射能測定,降下物,大気浮遊じん,河川水,土壌,蛇口水および各種食品試料のガンマ線核種分析(I-131,Cs-134,Cs-137,K-40)ならびに空間放射線量率測定を行った.
 降水中の全ベータ放射能,モニタリングポストを用いた空間放射線量率の連続測定およびサーベイメータを用いた月1回の空間放射線量率の測定結果では,異常は認められなかった.核種分析においては,Cs-134,Cs-137の人工放射性核種が降下物試料などから依然として検出されており,2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故の影響が継続して確認された.

2013rep12 2012年度の先天性代謝異常等検査の概要

   小林章人,前田千恵,楠原 一,永井佑樹,小林隆司

   キーワード:先天性代謝異常等検査,先天性副腎過形成症,先天性甲状腺機能低下症

 三重県における先天性代謝異常等検査事業は三重県先天性代謝異常等検査実施要綱に基づき,アミノ酸代謝異常症3疾患,ガラクトース血症,先天性副腎過形成症および甲状腺機能低下症の6疾患を対象に実施している.2012年度は県内の新生児のうち保護者が希望した16,208件について検査を実施した.そのうち疑陽性と判定し再採血を依頼した検体は計415件であり,精密検査を依頼した検体はガラクトース血症1件,先天性副腎過形成症33件,先天性甲状腺機能低下症17件,有機酸代謝異常症1件の計52件であった.また確定患者数は,先天性甲状腺機能低下症の4人であった.

2013rep13 2012年感染症発生動向調査結果

   楠原 一,矢野拓弥,赤地重宏,前田千恵,永井佑樹,岩出義人,小林隆司

   キーワード:感染症発生動向調査,病原体検査定点,感染症胃腸炎,日本紅斑熱,風しん

 2012年1月1日~12月31日までに県内の病原体検査定点医療機関等から検査依頼のあった患者数は683人であった.疾患別の内訳は,感染性胃腸炎214人,リケッチア感染症57人,インフルエンザ46人,ヘルパンギーナ27人,不明発疹症23人の順に多かった.これらのうち,456人(67%)から病原体が分離・検出された.
主な分離・検出病原体はノロウイルスGⅡ型(NV-GⅡ),ライノウイルス,日本紅斑熱リケッチア,ヒューマンメタニューモウイルス(HMPV),A群ロタウイルス(RoA),パラインフルエンザウイルス(Parainf),RSウイルス,インフルエンザウイルスAH3型(InfAH3)であり,疾患によって様々な病原体が関与していることが明らかとなった.

2013rep14 2012年度感染症流行予測調査結果(日本脳炎、インフルエンザ、風しん、麻しん)の概要

   矢野拓弥,前田千恵,楠原 一,赤地重宏,松野由香里,山寺基子,小林隆司,西中隆道

   キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ,風しん,麻しん

 感染症流行予測調査事業では,人の年齢別抗体調査による免疫保有状況(感受性)と,動物(豚)に潜伏している病原体(感染源)を把握する調査を実施している.2012年度に実施した調査結果の概要は次のとおりである.
(1) 日本脳炎感染源調査については三重県中部地域で飼育された豚の日本脳炎ウイルス
に対する赤血球凝集抑制(Hemagglutination inhibition:HI)抗体保有の有無を調査したがHI抗体保有豚は検出されなかった.
(2) ヒトの日本脳炎感受性調査における中和抗体保有率は279人中165人(59.1%)であった.
(3) 動物のインフルエンザウイルスの侵入を監視するため,豚100頭を調査したがインフルエンザウイルスは分離されなかった.
(4) ヒトインフルエンザウイルスの流行期前の血中HI抗体保有率(HI価40倍以上)は 乳児から学童期に対してのA/California/7/2009(H1N1pdm2009)は0-4歳27.4%,5-9歳50%,A/Victoria/361/2011(H3N2)は0-4歳19%,5-9歳54.5%であった.B型インフルエンザウイルスのB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)は0-4歳9.5%,5-9歳31.8%であった.B/Wisconsin/1/2010 (山形系統)では0-4歳0%,5-9歳4.5%であった.
(5) 風しん感受性調査における全年齢層でのHI抗体保有率は89.6%(男性:83.8%,女
性:93.5%)であった.
(6) 麻しん感受性調査における全年齢層でのPA(Particle Agglutination Test)抗体保有率は91.4%であった.

2013rep15 ”Mieこどもエコフェア”への出展について ~環境教育に関する一考察~

   新家淳治,齋藤麻衣,宇佐美敦子,柘植 亮,巽 正志,市岡高男,秋永克三

   キーワード:子供,エネルギー,低酸素社会,環境教育

 2013年7月にMieこどもエコフェアが開催され,三重県保健環境研究所資源循環研究課からブースを出展した.例年,内容を変えて出展しているが,本年度は科学的遊びに加え環境教育的な要素も付加した.出展内容は,①空気砲で風鈴を鳴らすこと,②団扇で風力発電模型に風を送りLEDランプを点灯させること,の2種類のゾーンを設けた.来場した子供の年齢範囲は4~12才程度であった.②については,「エネルギーはつながっている」と題して団扇で扇ぐエネルギーが最終的にLEDランプの光に変化したことを説明した.また,エネルギー変化の内容が理解できたかどうかアンケートを行った.アンケートに回答してもらった子供の年齢は7~12才であり,すべての子供が「エネルギーはつながっている」ことを「理解できた」または「なんとなく理解できた」と回答した.

本ページに関する問い合わせ先

三重県 保健環境研究所 〒512-1211 
四日市市桜町3684-11
電話番号:059-329-3800 
ファクス番号:059-329-3004 
メールアドレス:hokan@pref.mie.lg.jp

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