伊勢湾貧酸素情報
平成15年度貧酸素情報
(第3報)
平成15年8月12日
三重県科学技術振興センター
水産研究部 鈴鹿水産研究室
台風10号による強風で伊勢湾内の上下層がかなり攪拌されたもよう。貧酸素水塊の規模は縮小し,湾中央部の深場に限られて分布。7月観測時に特に低い酸素濃度を示した鈴鹿市~伊勢市沿岸の底層でも3ppmを上回り,大きく改善された。
8月11日の調査船「あさま」の定線観測によると,水温は表面で23.7~27.8℃,10mで 22.4~24.9℃,底層で20.0~24.5℃の範囲にあった。表面では湾奥部で平年並~かなり低め,湾中央部~湾口部で平年並~低め,10mおよび底層では湾奥部~湾中央部で平年並~やや高め,湾口部で平年並~やや低めであった。
塩分は表面で4.68~25.95,10mで29.52~31.76,底層で29.78~33.83の範囲にあった。表面では湾奥部で平年よりかなり低め,湾中央部~湾口部で低め,10mおよび底層では湾全域で平年並であった。
DO(溶存酸素量)は,表面で5.3~10.1ppm,10mで4.1~5.7ppm,底層で1.0~5.3ppmの範囲にあった。10mでは湾全域で平年並,底層では湾奥部で平年よりやや高め,湾中央部の三重県側海・謔ナやや高め,愛知県側海域で平年並,湾口部で平年並であった。
今回の観測では,顕著な赤潮は確認されなかった。台風10号による出水の影響で,湾奥部を中心に泥混じりの水色の悪い海域が広く分布し,全般に透明度が低かった。
台風10号の通過で,伊勢湾の海況は大きく変化した。7月観測時に広い範囲で分布していた貧酸素水塊(DO2ppm以下の水塊)は規模を縮小し,湾中央部の深場に限られて分布していた。7月観測時にDOが1ppmを下回っていた鈴鹿市~伊勢市沿岸の底層においても大きく改善され,各測点とも3ppmを上回るDOが観測された。台風通過後の8月9日に,河芸町地先の海岸にタイラギ(比較的深場に生息する二枚貝類)が多数打ち上がられたとの情報もあり,台風による強風で伊勢湾内の上下層がかなり撹拌されたようである。
しかし,夏季の伊勢湾の貧酸素水塊は,比較的短期間で復活することが知られている。また,今回の出水で陸上から大量の有機物が流入していることから,今後,底層付近での酸素消費が加速し,貧酸素化がより促進される可能性がある。今後の動向を注視したい。