伊勢湾貧酸素情報
平成16年度貧酸素情報
(第3報)
平成16年8月10日
三重県科学技術振興センター
水産研究部 鈴鹿水産研究室
溶存酸素量2ppm以下の貧酸素水塊は,伊勢湾中央部及び湾奥の底層に分布しているが,その面積は平年より狭い。台風の通過で大規模な貧酸素状態が解消した前年同期と比べても,今年の貧酸素水塊の範囲は狭くなっている。
8月6日の調査船「あさま」の定線観測によると,DO(溶存酸素量)は,表面で5.4~10.0ppm,10mで4.9~5.8ppm,底層で0.6~4.9ppmの範囲にあった。
表面では平年よりやや低め,10mでは平年並みかやや高め,底層では湾口から湾中央部で低めの他は平年より高めであった。
底層で2ppm以下の貧酸素水塊は,近年ではその面積は非常に小さく,伊勢湾奥のSt.2,伊勢湾中央部のSt.11及びSt.Aで観測されたのみであった。
今月の観測は,調査前に四国沖から日本海に抜けた台風11号の影響で,表層付近は時化による鉛直混合と前日までの降雨による河川水の流入によって,水温と塩分が低下しており,濁りもかなり見られた。
昨年8月の観測時も,今年と同様に観測前に台風10号が通過して,7月まで見られた大規模な貧酸素水塊が解消する現象が見られたが,その際に観測された底層における2ppm以下の範囲よりも,今回観測時の2ppm以下の値の範囲は狭かった。
しかし,夏季の伊勢湾の貧酸素水塊は,比較的短期間で発達することが知られており,また,今回の出水で陸上から大量の有機物が流入していることから,今後,赤潮の発生等によって底層付近での酸素消費が加速し,貧酸素化が促進される可能性があるため,依然注意は必要である。
また,人工衛星画像等によると,現在熊野灘で黒潮蛇行が発達しているもようで,伊勢湾口部から黒潮系の高塩分水が流入するといった,海況の急激な変化が発生する可能性もあるため,今後湾外の海況変化の動向をも注視する必要がある。