1,4-ジオキサン対策について
平成21年11月30日付け環境省告示により新たに環境基準に設定された1,4-ジオキサンが、遮水壁内外で環境基準を超えて検出されました。放置すれば、1,4-ジオキサンを含む汚染地下水の拡散及び河川への放流により嘉例川が汚染され、農業用水での利水や内水面漁業、水道水源の利水に影響を及ぼし、生活環境保全上の支障を生じるおそれがあることから、産廃特措法による国の支援を得て、行政代執行により対策を進めました。
なお、産廃特措法は、平成10年6月16日以前に行われた不法投棄等による支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、都道府県等が行う特定支障除去等事業に対し国が支援措置を講ずるものであり、事業費の90%が起債対象となり、起債額の50%が特別交付税にて措置されます。
生活環境保全上達成すべき目標
目 標 |
不法投棄地周辺地下水及び嘉例川が環境基準を達成し、その状態が保たれている。 |
目標達成のために |
緊急対策 ・汚染地下水の拡散防止 恒久対策 ・汚染地下水の浄化 ・不法投棄された特定産業廃棄物による地下水汚染の防止 |
環境修復対策工
1. 緊急対策
不法投棄地の周辺に拡散している1,4-ジオキサンは、直近の嘉例川近傍にまで拡散していたことから、平成23~24年度に「汚染地下水の拡散防止」のための「緊急対策」として、事業実施計画に基づき既存水処理施設の改修を行い、汚染地下水の周辺への拡散防止のための措置として揚水処理を実施しました。
なお、事業実施計画の本文は、以下「2.恒久対策」でご覧いただけます。
【緊急対策に係る事業実施計画の概要】
(1) 既存水処理施設の改修
現有の水処理施設(処理能力:60㎥/日)に1,4-ジオキサンの処理機能(促進酸化施設)を付加するとともに、安定した水処理を行うために機能低下している箇所の修繕を行いました。
(2) 揚水浄化処理
不法投棄地内及び周辺の汚染地下水を揚水し、バリア井戸工法により地下水位を管理することで汚染の拡散を防止します。
2. 恒久対策
1,4-ジオキサンによる生活環境保全上の支障を生じるおそれを除去するためには、「汚染地下水の浄化」、さらに「不法投棄された特定産業廃棄物による地下水汚染の防止」の恒久対策を実施する必要があります。
しかし、1,4-ジオキサンは国内における土壌浄化技術等の適用事例もなく、原位置浄化に係る技術的知見も集積されていませんでした。
そのため、抜本的な支障の除去を目的とした恒久対策は、緊急対策による汚染地下水の拡散防止を達成した後、速やかに恒久対策の実施に向けた調査や試験などを実施し、十分な議論を踏まえて、技術的にも経済的にも合理的な手法について検討を行う必要があることから、大学教授等の有識者からなる桑名市五反田事案技術検討専門委員会を設置し、社会的背景の変化や技術進歩の状況を踏まえ、経済的・技術的に合理的で地域住民等関係者の合意が得られる対策工法について検討を進めました。
桑名市五反田事案技術検討専門委員会の詳細はここをクリックして下さい。
技術検討専門委員会の報告を踏まえ、経済的・技術的に合理的な恒久対策工法として、「部分掘削処理+揚水浄化」の工法を選定し、産廃特措法に基づく特定支障除去等事業実施計画(変更)を策定しました。
なお、実施計画(変更)は平成25年3月26日に環境大臣の同意を得ました。
三重県桑名市五反田地内産業廃棄物不法投棄事案に係る特定支障除去等事業実施計画
平成25年3月26日 環境大臣同意(変更)
桑名市五反田事案実施計画(変更)その1 桑名市五反田事案実施計画(変更)その2
【恒久対策に係る事業実施計画の概要】
(1) 事業内容
生活環境保全上の支障となっている1,4-ジオキサンによる地下水汚染を防止するため、地下水の汚染源である高濃度汚染域の廃棄物及び汚染土壌を撤去し、場外処分を行うとともに、鉛直遮水壁内外に設置した井戸から揚水した汚染地下水を水処理施設で処理し、地下水の浄化を図ります。
(2) 事業費 約75億円(全体事業費は約79億円)
(3) 期間 平成25~令和4年度(全体事業は平成23~令和4年度)
平成25~30年度は、高濃度汚染域の廃棄物及び汚染土壌の掘削撤去工事を実施するとともに汚染地下水の揚水浄化処理を行いました。平成31年(令和元年)~令和4年度は、水処理施設の能力増強工事を実施したうえで、揚水浄化処理を継続し汚染地下水の浄化を進めます。
新規水処理施設
汚染地下水の揚水浄化により特措法の期限内に目標達成できるよう、水処理施設(処理能力:19㎥/日)を新設し、令和元年5月から稼働しました。
1,4-ジオキサン分解のための水処理フローの概略
【桑名市五反田事案効果検証委員会の概要】
大臣同意を得て変更した特定支障除去等事業実施計画に基づき、平成25年度以降、汚染地下水の揚水浄化を継続しつつ、高濃度汚染域の廃棄物等の掘削撤去及び場外処分、廃棄物を残置する区域の遮水壁補強工事を実施しました。
対策による効果を検証しながら必要に応じて見直し、目標の達成をより確実なものにしていくため、大学教授等の学識経験者からなる桑名市五反田事案効果検証委員会を平成29年1月に立ち上げました。
桑名市五反田事案効果検証委員会の詳細はここをクリックして下さい。
3. 対策中のモニタリング結果
行政代執行の終了及び終了後の対応
(1)行政代執行の終了
支障除去等対策の実施結果及び効果検証委員会における学識経験者の意見等を踏まえ、令和5年3月31日に行政代執行を終了しました。
(2)行政代執行終了後の対応
行政代執行終了後も、県は生活環境保全上の支障等が除去された状態が維持されていることを確認するための、モニタリング等を実施していきます。(ア)モニタリングの実施
事案地周辺等の河川水や地下水等のモニタリングを実施します。
(イ)工作物目視点検及びパトロールの実施
支障除去等対策で設置した工作物の目視点検や定期的なパトロールを行い、事案地の状況に変化がないことを確認します。