現在位置:
  1. トップページ >
  2. スポーツ・教育・文化 >
  3. 文化 >
  4. 文化総合 >
  5.  サイトウミュージアム 体験レポート
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2. 環境生活部  >
  3. 文化振興課
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
令和04年07月26日

サイトウミュージアム 体験レポート
2022.7.26公開


 今回ご紹介するのは、松阪市のサイトウミュージアムです。

 同館は、病院経営をする精神科医で、美術収集家の齋藤洋一さんの私設美術館です。齋藤館長は以前から、ホスピタルアートとして入院患者さんなどに自身のコレクションを見てもらっていました。治療効果を高めつつ、日々の楽しみを提供するためです。その範囲が一般にも広がり、同館が開館しました。松阪市内で唯一の美術館です。



<目次>
開館の経緯
齋藤コレクション
松阪という地域について

館の概要


 

開館の経緯                        


 齋藤館長のもとで、美術館運営を取り仕切るのは、学芸員の田中善明さんです。田中さんは、三重県立美術館で長年学芸員として勤め、日本の近代洋画を専門分野として、展覧会と保存修復を担当しました。県立美術館の数多くの企画展が、田中さんによって実現されています。

 二人の交流は、田中さんが企画展のため、齋藤さんから作品を借りたことがきっかけではじまりました。齋藤さんと田中さんは「好きな作家」が共通したことなどから意気投合し、絵画の収集や管理について齋藤さんが田中さんに相談するようになりました。その交流が「美術館を作りたい」という構想に発展しました。

せっかくの作品を皆さんにご覧いただかないと、作品に失礼ではないか
松阪には様々な文化施設があるが美術館はない。松阪の文化への支援の一助になれば
松阪に恩返しがしたい

 これらの齋藤さんの思いを聞き、美術館での仕事に「やり切った」という思いを持っていた田中さんは、三重の文化振興に資する新たな挑戦として、私設美術館設立に取り組むことを決意しました。美術館を作ることが決まると、齋藤さんの美術収集も加速しました。その膨大なコレクションを、美術館を早期退職した田中さんが、一点一点調査をしました。


 元は百貨店だった建物が大改装され、美術館になりました。建築の専門家に相談しつつ、かねてから建築に関心があった齋藤館長の考えが大きく反映された改装でした。館長がニューヨークに訪れたときに学んだ成果も取り入れられ、外装も内装もとても斬新なデザインの美術館が生まれました。

 そのスタイリッシュなデザインに加え、齋藤館長と田中学芸員が重視したのはコストでした。私設美術館である以上、改修にお金がかかればかかるほど、また維持費がかさめばかさむほど、入館料に反映されていきます。施設として持続するためにも、「少しでも安い料金でご覧いただきたい」というのが、二人の共通の思いでした。

 そうした積み上げたものが形になり、2022年5月8日、「サイトウミュージアム」が開館しました。


 

目次に戻る


 

齋藤コレクション                   


 同館の展示品となる「齋藤コレクション」は、3000点を超えます。これを年三回の企画展で、テーマごとに展示していきます。展示室のキャパシティーから、一回の展示数は45~60作品です。計算すると、軽く15年分のストックがあります。しかも、館長は今も収集を続けています。コレクションはさらに成長し、展示内容もますます充実することになりそうです。


 3000点のほとんどが日本の近代絵画です。洋画・掛軸を含む日本画・素描など、ジャンルは様々で、地域も、三重や松阪ゆかりの画家も多いですが、必ずしもこだわっていません。ただし時代については、大正~昭和中期のものがかなり充実しています。最初は限定せず収集していたのですが、次第に時代が集中していきました。江戸時代までの価値観が大きく覆され、人々の文化意識が大きく変容するとともに、西洋から印象派をはじめとする新しい表現形式が、すさまじい勢いで流入してきた時期です。そんな大変革の中、多くの画家が、自分の表現やアイデンティティを探り悩みながら芸術制作していました。大きな戦争が何度も起きた大変な時代ですが、芸術家たちの美意識が研ぎ澄まされた期間でもありました。

 素晴らしい才能が集まった反面、卓越した技量を持ちながら埋もれていった人も数多く、二世代三世代と時を経る中で名前を忘れられました。現在、その時代の優れた作品が、散逸消滅の危険に晒されています。その危惧も、齋藤館長がこの時代の作品の収集に注力する理由の一つです。


 そんな風に忘れられ、今日に十分な情報が残っていない芸術家のことを調べるのは、困難を極めました。日本の近代洋画を研究し、美術館で長年学芸員として勤め上げた専門家をもってしても、詳しいことがすぐにはわからないことが多くあり、中には初めて聞く名前もありました。田中学芸員は「齋藤コレクション」の調査に2年以上の時間をかけています。

 未知の出会いの多さに驚きつつ、田中学芸員はむしろワクワクしたそうです。そして、そのワクワクを、館に訪れる人にも味わってもらいたいと考えました。齋藤館長と相談し、展示方法を工夫しました。たとえば、同館では画家の経歴の説明を極力排除しています。また、経路との関係で、作品の解説は作品を鑑賞してから読むように配置しました。先入観を排除するための配慮です。田中学芸員ですら知らなかった画家なら、当然、館を訪れる人の大半は知らないはずです。そのことは、逆に、作品自体を純粋に楽しんでもらえるチャンスだと捉えています。


 館長が試行錯誤しながら収集した「齋藤コレクション」、その行為自体が一つの芸術作品の制作に似ていると、田中学芸員は感じています。集められた作品の質には自信があります。


 
2022年5月8日(日)~8月28日(日)開催の開館記念展「旅する絵画」で展示されていた作品です。企画展ごとに展示される作品が変わりますのでご注意ください。最新の企画展は同館の公式サイトでご確認ください。写真では作品の魅力は十分には伝わらないと思います。ぜひ実物をご覧ください。

(目次に戻る)


 

松阪という地域について                       

 
 本居宣長、長谷川治郎兵衛、原田二郎、松浦武四郎など、松阪の偉人たちには共通点があります。勤勉であること、経済観念に優れていること、そしてその経済力を社会や地域に還元する高い公共心を持っていることです。さらに、それらの気質は、限られた偉人だけではなく、松阪に暮らす人々一人ひとりに根付いています(旧長谷川治郎兵衛家・原田二郎旧宅のレポート記事参照。他にも、本居宣長記念館松阪市立歴史民俗資料館(小津安二郎松阪記念館))。

 医業に尽力するとともに、純粋に芸術の追求のため作品を収集して、私財を投じ設立した施設を廉価な入場料で開放する齋藤館長の姿勢は、その松阪人の気質そのものであるように思いました。この館の最大の展示品は、松阪人の心意気なのかもしれません。



上に同じく、開館記念展「旅する絵画」より

(目次に戻る)


 

館の概要                                    


サイトウミュージアム
三重県松阪市魚町1807-1
JR近鉄松阪駅南口から徒歩約8分
駐車場なし

開館時間 金曜日、土曜日、日曜日と祝日の 10時‐17時

入場料 大人 500円、高校・大学生 300円、中学生100円、小学生以下無料
※シニア(65歳以上)の方は400円(100円引き)、高校生以上で身体障害者手帳等をお持ちの方はご提示いただけますと200円引きとなります。

同館の公式サイトはこちらから
県HPでのご紹介はこちらから




(目次に戻る) 



 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 環境生活部 文化振興課 〒514-8570 
津市広明町13番地
電話番号:059-224-2176 
ファクス番号:059-224-2408 
メールアドレス:bunka@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000264670