水産普及だより 第 25-7号 平成25年10月21日
~ヒロメ養殖本格始動~
第25-6号の記事で、養殖ヒロメのご紹介をさせていただきました。これから何回かに分けて、ヒロメ養殖の様子を見ていきたいと思います。
ヒロメの生活環ついて
食用の一般的な「ヒロメ」とは、右のように葉っぱが広がった姿をしています。これは、ヒロメのライフサイクルの中では「胞子体」と呼ばれるもので、文字通り、胞子(遊走子)を作るための姿です。ヒロメ養殖では、この胞子体の幼い時期のもの(幼胞子体)を、立派に成熟した大きさにまで育て上げ、出荷します。
ヒロメ種糸の様子
では、養殖用の幼胞子体はどのようにして作るのでしょうか。
尾鷲栽培漁業センターでは、養殖時期以外はヒロメを「配偶体」と呼ばれる姿で保管しています。配偶体は、雄株と雌株に分かれていて、それぞれが出会わない限り胞子体にはなりません。養殖時期がやってくると、この配偶体同士をなんとミキサーにかけて混ぜてしまいます(右図)。こうして強制的に交配させます。
ミキサーにかけられた配偶体たちは、大きな水槽に蒔かれ、さらにその水槽に、胞子体を付着させるための糸を漬け込みます。水中を漂う配偶体からは精子と卵が放出され、受精して胞子体の素となり、糸の上に落ち着きます。それを一晩かけて、しっかりと糸に馴染ませます。このようにして幼胞子体を付けた糸を「種糸」と呼んでいます。
2013年10月21日現在では、この種糸に付着して育ちつつある幼胞子体を、もっと大きな管理用水槽に入れて出荷サイズになるまで静かに育てている状態です。
次回は、種糸についたヒロメの近況についてご紹介します。