おさかな雑録
No.73 渦鞭毛藻・アレキサンドリウム属2種 2012年9月3日
貝毒原因プランクトン その1
二枚貝が毒素のある植物プランクトンを餌として捕食し,体内で毒素を蓄積・濃縮し毒化することを「貝毒」といいます。この毒化した二枚貝を食べると,手足のしびれといった麻痺(まひ)や下痢などの食中毒を起こすことがあります。
※さらに詳しく知りたい方は,『貝毒について知っていただきたいこと(三重県庁)』へ。
※現在は検査体制が確立されており,毒化した貝が店先に並ぶことはありません。安心してください。
今回は県下で確認される麻痺性の貝毒原因プランクトン2種類,アレキサンドリウム・カテネラ(以下,カテネラ)とアレキサンドリウム・タマレンセ(以下,タマレンセ)の紹介です。 共に約0.03mmと小さく,とても似ています。
アレキサンドリウム・カテネラ(2連鎖) アレキサンドリウム・タマレンセ (2007.5.3 鳥羽市浦村) (2000.2.8 鳥羽市桃取)
「種類の識別まで必要・・?」と思うかも知れません。 実は大切なんです。というのもタマレンセはカテネラよりも1細胞あたりの毒性が何倍も強いとされています。 食の安全を守るため,どっちの種類が増える傾向なのか? 貝毒になるくらいの密度なのか? の見当をつけることは水産研究所の重要な仕事です。
さて,とても小さいプランクトンですが,外見で識別できます。これらの仲間は鎧板(よろいばん)という殻で覆われており,それを染色するなどして特定の部位の形で種名を特定します。 下に,その特徴を紹介します。
▲アレキサンドリウム属の分類の決め手となる鎧板の形態
▲カテネラの鎧板
▲タマレンセの鎧板
採水した海水から似ているプランクトンを見つけると,研究員は”ドキッ”とします。それがこの2種であれば,”あまり増殖しないで!”,と願うこともしばしばです。ちなみに, 今までに県下で麻痺性貝毒を引き起こしたのは,カテネラのほうが多いです。
それと,アレキサンドリウム属でも毒素を持たない種類がいます。ややこしいなぁ,と思うと共に,改めて海って不思議でいっぱいだなぁ,と感心します。
毒素をもたない
アレキサンドリウム・アフィネ
(2005.8.17鳥羽市浦村)
(2012年9月3日掲載 水圏環境研究課)