初冬は新ノリ(黒ノリ)の季節です!
伊勢湾では10月下旬から、各地でノリ網が張られはじめます。ノリの生育は冬が適しており、豊かな伊勢湾の栄養塩類を吸収して育ちます。12月の初旬にはノリの刈取り(摘採:てきさい)と板海苔への加工が始まり、新ノリが流通するのです。あまり知られていない(忘れてしまった?)ようですが、ノリだって鮮度が重要です。よいノリは、香りがすばらしく、口に入れるとふわっと溶けるような感じで、ほのかな甘味が口の中いっぱいに広がります。
ノリを水でふやかすと、2-3mmの破片に分かれます。これは、ノリの原藻であるスサビノリがミンチ状になったものです。スサビノリは長さが数10センチに達する紅藻類に属する海藻です。ノリが育って、収穫され、加工される様子はスライドショーギャラリーをご覧頂くとよく分かります。
ノリは品質によって非常に多くの等級に分けられ、入札のときの等級の大変多いとのことですが、焼き入れしたノリの簡単な選び方をご紹介します。
●色合いにムラがないものを選びます。
●色が深い緑色で、ツヤがあり、ノリの香りが多いものを選びましょう。
●乾物の専門店では、食べ方に応じたおすすめの製品をお店の方に相談してみましょう。
●鮮度を保つために、乾物ではあっても冷蔵庫、あるいは冷凍庫で保存がベストです。その際には、乾燥剤多めに入れておくこと。
すでに焼いてある焼きノリを食べる機会が多いのですが、一度は専門店等で焼いてないものをご購入し、ご自宅で焼くことで、ノリの豊かな香りと旨味を楽しんでいただきたいものです。焼き方のコツは、
●焼く前30分くらい前に冷蔵庫から出して袋のまま常温に戻しておきます。冷えたまま焼くと、湿気を帯びてしわがよってしまいます。
●一般的にはツヤのある側が表。表を内側にして2枚合わせて、予熱したオーブントースター(強)で1,2秒ごとに表裏左右を変えながらあぶります。
●焼き上がりの目安は、ノリの色が深い紫色から深い緑色に変化し香ばしい匂いが出てきたたときです。一瞬で変化しますから気を抜かないように焼いて下さい。やけどしないように注意してくださいね。
●ノリは温度や湿度が高くなると劣化が進み、色も変色し香りも味もなくなってしまいます。
鮮度が悪くなったかな?と思われたら迷わず天ぷらや佃煮などに加工しましょう。
●市販の焼き海苔は再度焼いてはいけません。香りが飛んでしまいます。
さて、ご自宅で焼きたてのノリを味わうおすすめの食べ方は、手巻きずしです。ノリを焼くのには若干の手間がいりますが、その手間を費やしてもなお、ノリの風味を存分に味わうことができます。中に巻くネタには、新鮮な魚介類を用いていただくのはもちろんですが、あっさりとキュウリだけでも、ノリを楽しむにはよい方法でしょう。なお、ノリを味わう手巻きずしのすし飯は、通常より糖分を若干減らしてほしいものです。ノリの持つ自然な甘さが引き立ちますよ。
ノリとアマモ
ノリの養殖海域には、アマモという海草が生えています。アマモは葉がかすかに甘いことから甘藻と呼ばれたことが名前の由来で、ジュゴンの食べ物として有名ですね。アマモの藻場は、生物の産卵場や保育場として、また窒素、リン、二酸化炭素を吸収するなど、海の生態系と人にとって重要な役割を果たしています。
一方で、アマモは伊勢湾のノリ産業を苦しめる要因のひとつでとなっているのです。アマモの葉が千切れて流れてノリの製品に混入してしまうことがあり、わずかな混入であってもその板海苔は異物混入とみなされ返品、廃棄されてしまいます。現在の技術では選別機で取り除くのが難しく、たった数ミリメートルのアマモ破片ですら漁業者が手作業で取り除いています。異物とは言え、金属片やプラスチック片とは異なり、食べても問題にならないのに・・・。
食べ物の安心・安全は、絶対に守られねばなりません。しかし、食べ物が自然の産物であることを忘れ、過度の問題視により食べ物を廃棄する事態が起こっているのです。せめて、「アマモが混じっている」ことを示す等級ができて少しでも消費に回せるならば、アマモが育つような美しい豊かな海に育つノリが無駄にされてしまうことが減らせるかもしれません。
三重県は、伊勢湾の重要な産業であるノリ漁業の振興を図ると同時に、海の環境保全の一環としてアマモの海中林を取り戻す活動にも取り組んでいます。
(企画・資源利用研究課)