鮎(アユ)
アユは清流の女王とも言われ、姿の美しさ、味など、夏においしい代表的な淡水魚です。川の上~中流域に生息し、石の表面に生える藍藻などの付着藻を櫛のような歯でこそぎとって食べています。アユはスイカのような香りを持つことでも知られ、この香りは、川で珪藻を食べているからであると思っている方が多いようです。実際には、アユが食む石の表面に生えているのは藍藻を中心とした藻類で、必ずしも珪藻が餌料の中心ではないこと、アユの独特の香りはアユの体内の脂肪酸がアユ自身が持つ酵素で分解されるときに出る副産物の香りであることがわかっています。このため、稚魚期に動物プランクトンを食べている体長数センチの稚魚でも、海で生活しているにもかかわらず同様の香りがします。
アユをおいしく食べるのに最も大切なことは、鮮度をよいものを選ぶことです。また、アユの定番の料理法は塩焼きで、泳いでいるかのように姿よく焼き上げると一層食欲をそそります。
淡水魚の塩焼きの作り方で注意すべき点は、焼く直前に塩をまぶすことです。決して塩をまぶした後に放置をしてはいけません。ヒレなどに化粧塩を施している間であってもよくない(水分が出てしまう)ので、まず、化粧塩をしてその後魚体に少量の塩を振りかけるようにしましょう。
※海水魚の塩焼きでは、焼く前の10分~1時間前(赤身の魚は短く、白身の魚は長め)に振り塩をして、味を滲みこませてから、焼く直前に改めて化粧塩をして焼き上げます。
※化粧塩とはヒレなど焦げやすい場所に塩をたっぷり盛って、形よく、焦げないようにする和食の技法です。
火加減は強火の遠火と言われていますが、グリルでは少々強火で短時間に焼き上げるようにしてください。焼いていると皮がふくれて気泡ができますので、2つか3つの気泡ができるくらいが焼き上がりの目安です。気泡ができるということは、中で水分が沸騰し、蒸し焼き状態になっているということです。ジューシーさが失われてしまわないように、焼き過ぎに注意しましょう。なお、串を用いて魚を泳いでいるように見せる踊り串という技もありますが、グリルを用いる場合には焼きむらができやすいこと、焦げ付きやすいこと、骨を抜きにくいなどの問題点があるので、家庭での調理ではおすすめしません。
これを知っているとちょっと通?骨抜きの仕方
アユなどの小魚を食べる時には小骨などに注意しながら食べる必要がありますが、アユの塩焼きでは背骨や小骨を取り除く画期的な方法があります。骨を抜いた身は、内臓のほろ苦さを楽しみながらまるごと食べることができます。方法は以下の通りです。
①塩焼きの頭を左にして、すべてのヒレを手でちぎり、取り去る。
②アユのおなかを下にした状態で、背骨と身が皮の中で離れるようにおはしでぐいぐいとアユの背中を押す。
③アユの頭と体の間の皮を破る。
④アユの頭を左手で、体を体をもち、首の辺りの背骨が切れてしまわないように頭と背骨を引っこ抜いてできあがり。
⑤残った頭と背骨は捨てずにグリルなどで焦げないようにカリッとなるまで気長に焼くと、ぱりぱりとおいしくいただくことができます。ぜひお試し下さい。
このほかのレシピとしては、キツネ色になる程度に軽く白焼きをしてヒレと骨を取り除いた身を使ったアユ雑炊もおすすめです。雑炊を作るときにはおいしい三重県産の煎茶を加えると鮎の身の上品さが一層引き立ちます。薬味はねぎ、ミョウガ、三つ葉、セリなどが合いますのでお試し下さい。
夏の風物詩であるアユを味わいながら、美しい三重の清流を思い浮かべ涼を楽しんでください。
チリメンジャコの中にアユ!
アユは晩秋に川の中・下流域で産卵し、稚魚は海で育ちます。春先に再び川に遡上しますが、下の写真は本来川に遡上していなければならない時期より後に、海で漁獲されたちりめんじゃこの中に混じっていたアユの稚魚です。6~7月くらいまでシラスなどに混じって伊勢湾ではアユが漁獲されることがあり、川に遡上することを忘れているふしぎな個体が結構いることを示しています。