食べ方次第ではおいしいヒラアジの仲間
三重県沿岸では、秋になると20cm前後のヒラアジの仲間(ロウニンアジ、ギンガメアジなど)が漁獲されます。もともと南方系の魚で、稚魚が海流に乗って運ばれ、夏の暑い時期に三重県沿岸で成長します。夏から秋にかけて、入り江の各地でイワシ類などの小魚を豪快に追い回して捕食する姿を見ることができます。浅い海で、小魚が水面を飛び跳ねながら逃げ惑う姿を見かけたら、それはヒラアジ類による捕食行動が水面下で行われているのかもしれません。
夏には活発に捕食を行い成長するヒラアジ類ですが、三重県の沿岸では低水温のため冬を越すことができず死んでしまうことが多い魚です。(学術的には死滅回遊魚と言います。)身は脂の少ないマアジといったところで、マアジなどと比較し、旨味や脂が少なくあっさりとしていますので、工夫しながらおいしく食べてほしいものです。もともと三重県ではこの魚の食習慣があまりないことから市場価格は高くなくお値打ちに購入することができますよ。
紀伊長島で獲れたロウニンアジの幼魚(およそ25センチメートル)
おすすめの食べ方
新鮮なものであれば刺身を試してください。味わいが淡白なので、油を足した調理とよい相性です。そこで、刺身を作るときに薄切りにしてカルパッチョ風はいかがでしょうか。バルサミコ酢や三重県特産のマイヤーレモンを使ったオリーブオイル仕立てのドレッシングを合わせましょう。付け合せには、チコリ、生食用春菊などしっかりした野菜を合わせてみてください。野菜の苦味と甘い粘りのある身がドレッシングの酸味の中で一体となり、フルボディのワインにもきっと負けない味わいが楽しめます。
また、塩焼きもおすすめです。ヒラアジの仲間は脂があまり乗っていないので、焼きすぎると硬くなってしまいますから、身のジューシーさを残すように焼いてください。強火の遠火で火が通るかどうかのぎりぎりのところで火から下ろし、余熱で火を通しましょう。右の写真のように、皮がふくれて表面に焦げ目がうっすらと付く程度が望ましいです。ただし、右の写真の塩焼きでは、見栄えをよくするために魚体の側面に切れ目を入れています。このため、少し水分が飛んでしまい、ジューシーさが損なわれてしまいました。脂の少ない魚や淡水魚の塩焼きでは、切れ目を入れないほうがよいようです。この記事を読んだ読者の方は、失敗しないようにしましょう!なお、塩を振って時間がたつと水分が抜けてしまうので、塩を振るタイミングは焼く直前です。
ちょっと高級なヒラアジの仲間
三重県の沿岸域に生息する代表的なアジの仲間としてはシマアジ、カイワリ等があげられます。どちらも大変おいしい魚で、市場でも評価が高く、高値で取引されます。ヒラアジと同様に食べていただけますが、これらは、ロウニンアジやギンガメアジなどと比較して、しっかりと脂が乗っています。なお、カイワリは貝を割って食べることからカイワリと名づけられたのではなく、二又に分かれたものをもともと貝割りとよばれていることから(例えば貝割れ大根など)、尾鰭がキレイに二叉に分かれているこの魚をカイワリと呼ぶようになったとされています。 どちらも淡白ながら大変旨味の豊富なおいしい魚ですので、小売店で見かけられたらぜひお試し下さい。
おすすめの食べ方は、刺身、塩焼き、酒蒸しなど、淡い味付けで魚の持ち味を活かすような調理がおすすめです。
シマアジ(紀伊長島産 30センチメートル) | カイワリ (尾鷲産 20センチメートルほど) |
(企画・資源利用研究課)