イカナゴ(コウナゴ、小女子)の成魚
イカナゴ(コウナゴ・小女子)と言えば、春先のくぎ煮にしたりチリメンにする数センチの小さなものが有名ですが、冬から春にかけて出回る10センチ程度の大きなイカナゴ成魚も大変おいしいさかなです。生で出回るほかに釜揚げにして販売されています。
釜揚げイカナゴの簡単な食べ方は、そのまま酢醤油に漬けて丸かじりすることです。頭や骨のショリショリとした食感が楽しいですが、気になる方は指で頭、内臓、背骨を取り除き身だけにしてください。一転して上品な、それでいて脂の乗った、まったりとした味わいに変わります。骨などを取り除いた身は水さらししたタマネギのスライスとマリネにすると、酢との相性のよさに驚かされることになります。ドレッシングはあっさりとした酢、油、塩、コショウがよいでしょう。油はごま油やオリーブオイルなど香りの強いものより、サラダ油や太白のごま油など香りが強すぎないものを使っていただき、イカナゴの香りを楽しんでほしいと思います。
また、鮮度のよい生の状態のイカナゴ成魚が出回ることもあります。これは卵とじ、片栗粉などをまぶして唐揚げ、天ぷらなど様々な料理法で楽しむことができます。丸のまま食べることで、多くのビタミン類やミネラル類、DHAやIPA(EPA)などの機能成分を効果的においしく摂取できます。
イカナゴを守るための努力
伊勢湾のイカナゴは、12月から1月にかけて伊勢湾口部で産卵をします。ふ化した稚魚は湾内で成長します。およそ30mmにまで成長したことを確認すると、三重県と愛知県の漁業者が相談して解禁日を決めて漁獲を始めていました。しかし、昭和50年代にかけて、イカナゴの漁獲量が極端に少なくなってしまうことがありました。このときから導入されたのが、厳しい資源管理です。伊勢湾内のイカナゴの個体数を厳密に推定し、翌年に親となる成魚が一定量以上残るようにその年の漁獲量を厳しく制限する方法です。少ししか発生しなかった年に獲りすぎてしまったらその翌年に増えるための親がいなくなってしまいます。乱獲による親の数の減少を防ぐことが絶対に必要なのです。そこで、毎年一定量の親イカナゴを残して確実に産卵量を確保させることにより資源量をある一定レベル以上に保つとともに変動幅を小さくするように心がけています。おいしいイカナゴを絶やすことなくいつまでも消費者の皆さんに届けるための関係者の取組みです。それでも産まれてくる稚魚の数は様々な要因により大きく変動します。このため、年によっては発生したイカナゴの稚魚の数が極めて少ないこともあり、わずかな量のイカナゴしかとる事が許されず、市場に出回る量がわずかになることもあります。しかし、そのことが翌年以降の資源を守ることになるのです。
日本には古くから魚の食文化が発達しています。この食文化を守る裏方として、漁業関係者、加工流通業者、研究者、行政担当者の努力があることも知っていただけたら幸いです。
(企画・資源利用研究課)