旬のおさかな情報
ヒラソウダ
ヒラソウダは、熊野灘に面した定置網で漁獲される小型のカツオ類で、産地では「ソマ」とか「ソマガツオ」と呼ばれています。それほどまとまって獲れる魚ではありませんが、秋から冬にかけて漁獲が増え、体も大きく、脂ものって大変おいしい時期を迎えます。地元では知らない人がいないといって過言ではないほどの知名度ですが、おそらく都会では全く知られてないのではないでしょうか?
ヒラソウダ 南伊勢町奈屋浦 平成27年10月14日撮影
一方、良く似た魚にマルソウダがあり、こちらは「スボタ」とか「小ガツオ」、「メジカ」と呼ばれています。マルソウダとヒラソウダは、その名のとおり、横断面が丸みを帯びるかやや側偏するかで区別できることが多いのですが、肥っているかどうかで印象がかなり異なり、それぞれお互いによく似た体形の魚が出現して頭を悩ませます。
ヒラソウダ 標準体長33.5㎝ 南伊勢町奈屋浦 平成27年10月14日撮影
マルソウダ 標準体長34㎝ 南伊勢町奈屋浦 平成27年10月14日撮影
体型以外に両種を見分けるには、鰓蓋の上部にある暗色の斑点が、頭部背面の暗色部と離れるか連続するか、体側の被鱗域が急激に細くなるか否かがポイントとなります。上の写真では被鱗域は確認できますが、マルソウダの鰓蓋上部は光が反射してよく分かりませんので、下に背中側からの画像を示します。
マルソウダ 標準体長34㎝ 南伊勢町奈屋浦 平成27年10月14日撮影
赤丸で囲んでいる部分がマルソウダの特徴で、鰓蓋上部から背面へと暗色部が連続しています。ヒラソウダとマルソウダ、外見は良く似ていますが、中身はかなり違っていて、産地での評価も大きく異なります。マルソウダは血合いが多く、脂が少ないため削り節などの加工に向き、ヒラソウダは血合いが比較的少なく脂がのっており、もっちりとした歯ごたえと相まって、刺身用として大変人気があります。しかし一方で、この魚の美味しい時間ははかないもので、水揚げ後2日も3日も経つとその良さが消えてしまいます。したがって地元の人は喜んで食べますが、都会まで持って行って売ろうとは思わないわけです。
このような事情があるため、刺身で美味しいヒラソウダが高いとは一概に言えないわけで、産地まで出かけていけば、思わぬ上物が安く手に入ることもあります。今からの季節、産地のおさかな屋さんを覗く機会があれば、まずヒラソウダの姿を探してみてはいかがでしょうか?
最後におまけのクイズです。下に並ぶ魚は18㎝前後の幼魚で、まき網のマイワシに混じって漁獲されたものです。それぞれの名前がわかりますか?答えは後日。
南伊勢町贄浦 平成27年10月14日撮影
(2015年10月20日掲載 企画・資源利用研究課)
答えのページへ