検出された窯は1基で、急な斜面を掘り込んで築かれています。窯の床面は平坦で、傾斜がかなり緩やかであることから、古墳時代や奈良時代の須恵器窯に一般的な窖窯(登り窯)ではなく、平窯と呼ばれるタイプのものであると考えられます。また、煙を窯の外に排出するため、最奥部に石組みや粘土によって構築されたトンネル状の煙道が設けられている点が特徴的です。
この窯では須恵器の坏や甕が焼かれており、出土した須恵器の特徴などから、平安時代の窯であることが分かりました。
三重県内で発掘調査が行われた須恵器窯のほとんどは古墳時代から奈良時代にかけてのもので、平安時代の事例は稀少です。窯の形態は奈良時代以前のものとはかなり異なっており、この地域における平安時代の須恵器生産技術の導入について考えるうえで、重要な遺跡です。

煙道の様子 窯体の様子

発掘調査の様子
おもな時代:平安時代
遺跡の所在地:玉城町積良
発掘調査発掘調査報告書のリンク:
『近畿自動車道(勢和~伊勢)埋蔵文化財発掘調査報告ー第2分冊ー』(1992年)